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虫歯を治すセメント
16.12.15
安心、安全、納得の歯医者ならウエストデンタルへ、渋谷駅徒歩1分の歯科。
近年歯科技術が進み、いろいろなものが新しく開発されています。そのなかで、特筆するものが虫歯を治すセメントでしょう。成功率が100%になれば最高のセメントになるのですが、残念ながら80%と言われています。
そもそも、虫歯は自己修復力では修復できないためすべてを取り除くことが原則になっていました。こうなると、虫歯が神経まで達していれば当然神経を取る必要があり、歯の寿命に大きく影響をおよぼすことになります。ところがこのセメントで虫歯が治るとなれば、むしばになった歯をすべて削り取る必要がないため、神経まで虫歯が達していても痛みや明らかな症状がない場合はこのセメントを使って治療すれば神経を取らずに済むという優れもの。
では、このセメントとはいかなものなのでしょうか。このセメントの名前がドックベストセメントといいます。
ドックベストセメント(Doc’s Best Cement)治療の起源は、アメリカ、フィラデルフィアの歯科医師、Dr.John Henry Holiday(通称ドックホリデー)が19世紀後半に開発した銅セメントまでさかのぼります。
ドックホリデーは、子供の時に行った虫歯治療が102歳まで再発しないで健全に保たれた女性に着目し、その治療に使われていた銅セメントを改良して、レッドカッパーセメント(赤銅セメント)という、虫歯の防止と歯の神経組織の新陳代謝を復活させるセメントを開発しました。
ところが、この銅セメントは、途中で殺菌力を増すために銅の成分を増やしたところ、歯の神経を腐食させてしまい、使われなくなってしまったのです。
その後、歯科治療は虫歯をすべて除去して治療する方向に進んだため、銅セメントの事はほとんど忘れられていたのですが、1990年代に入り、アメリカの歯科医師 Dr.Tim Fraserが再び、患者さんの口の中に残っていた銅セメントに注目して、研究を始め、安全無害で殺菌力に優れたドックベストセメント治療が開発されたのです。
このような経緯で開発されたセメントとなります。
普通、虫歯治療では、虫歯菌に感染してしまった歯質(軟化象牙質)を完全に除去しますが、ドックベストセメント治療では、軟化象牙質(虫歯)を完全に除去すると神経が出てしまう時、この感染してしまっている軟化象牙質(虫歯)を完全に除去しないで意図的に残します。
ドックベストセメント治療中
残った軟化象牙質(図M)の表面をパーフェクトペリオという虫歯菌の殺菌水で殺菌洗浄した後、ドックベストセメントの殺菌成分を歯の内部に浸透しやすくするコーパライトという薬液とドックベストセメントの粉を混ぜ合わせた薬液(図C)を塗り、その上からドックベストセメントで封鎖します。
ドックベストセメント治療後
その後、ドックベストセメントを残したまま、通常の詰め物(図の青い部分)をして、治療は完了します。
そして、1年程度で、虫歯菌に感染した軟化象牙質がドックベストセメント(右図黄色とピンクの部分)の鉄(Fe)イオンと銅(Cu)イオンのコンビネーションによる殺菌力によって完全に殺菌され、軟化象牙質は、再石灰化して硬い象牙質になります。